種と野菜と起業と私

無縁だった農と出会って人生が変わっていくお話

暴れん坊の客

タイトルに「客」と失礼な書き方をしました。私は普段、お客様のことをそのような呼び方をしたことはございません。

ですが、タイトル通りの人がいるわ、いるわのオンパレード。しかもいい歳のおっさん、おばはんばかり。(普段はおじさま、おばさまと言っています♪)

 

一番強烈だった「客」のことは今でも鮮明に覚えております。

とある日の閉店間際のことでした。

夜番のスタッフ2名が慌てて事務室に走ってきました。男性スタッフ:「たっ!大変です!」女性スタッフ:「怖いっ!」とアワワ、アワワとしていたので、彼らスタッフ(当時は私の親以上の年齢のスタッフ陣です)を守らねばならん!と、急いで売場に出たところ・・・。

 

な、なんと。

レジのカウンター台に靴のまま上がって大声で何やら叫んでいる大の男2名を発見!

その周りにはチンピラと思われる男たち数名が、売場で暴れているではありませんかっ!このアホ達にまともなことを言ったところで通用するわけもなく、私は考えました・・・。

【小奴らのボスを探そう!】

周りを見渡すと、そこにはマフィアのボスかいなっ!という出で立ちのおっさん1名を発見!私は「コイツに言うしかない!」と心に決め、そのおっさんに近づきました。

 

「あっ、あのぅ・・・。この人達(レジカウンターに上がっているアホ2人)に、カウンターから降りてくださいと伝えていただけないですか?ここは、食べ物をのせる台ですから、人があがるところではございませんので。あと、大声を出さないでいただくようにも。お願いします。」

どう出てくるかな?このマフィア風のおっさん。

すると、マフィア風のおっさんが「オイッ!テメェラ、そこから降りろ!バカヤローッ」とアホなチンピラ達を叱りました。

その後、おっさんが私に「おいっ、アンタいい度胸してんな!そんなアンタに選んでもらおうかな。」って、「度胸とかじゃなくて、食べ物を扱う台に登ったらダメですからね。それだけです。で、何をお選びいたしましょうか?」と言いましたら、「これから女のとこに行くんだよ。だから何かプレゼント選んでくれないか。」だそうです。

 

っていうか・・・。

 

「ここ、直売所だっつうの!!!」

 

もうっ、色々頭にきたので、直売所の中でも、手作りアクセサリーで一番高い(税抜2万円です)やつをオススメしたら、喜んでマフィアの「お客様」はご購入くださいました。ありがとうございます♪

 

このチンピラの方々とは最後は、いい感じでご購入のお礼を申し上げて帰っていただきましたので、後味は悪くなかったのですが、その後襲いかかる「客」達の対応は本当に大変でした。

 

私は小奴らのようなとんでもないオヤジやオバハン達のおかげで、イヤ、せいで精神力が鍛えられていくのでした。

 

続く

 

 

動向調査で分かったこと

1年に1回、ご来店くださるお客様に動向調査を行っていました。

どこからお越しになっているか、ご来店目的、年代、その他ご意見等を伺い、今後の運営に役立てようというものです。

 

この調査で分かったことでしたが、市外の方がとても多かったことでした。特に多かった市は近隣ではありましたが、車で40分~50分かけてわざわざお越しいただいていたということです。その市では、漁業が盛んでしたが、農業をやっておられる方が少ないところだったので、恐らく「ないもの」を求めて来てくださっていたのかと思います。

年代は50代から60代前後の方が圧倒的に多かったですね。ご来店目的は、購入目的の方以外に、ドライブがてらでついでに寄ってみたという方が多かったのが特徴でした。時間にもお金にも少し余裕が出てくる年代の方達に支えられていたんですね。

確かに売れるものといえば、漬物、団子、赤飯、おこわ、果物、花、野菜は値段を見て購入。その世代の方々にドハマリの商品構成ですから、それは売れるわけですよ。

野菜の食べ方説明POPには「おひたし、天ぷらでどうぞ!」って書いて貼るだけでどんどん売れていくんですよ。いい時代でした・・・。

 

その他ご意見も様々ありました。

「レシピを置いてほしい」「同じ生産者のものを買うので陳列場所を変えないで」「野菜の種類ごとに陳列してほしい」「農業者が出荷しているものとは思えないほど品質が悪いものがある」「無農薬の野菜はないのか」「同じ野菜ばかり」「棚がガラガラのときがよくある」「gを表示してほしい」「値段が高い」等など他にもたくさんの意見がありました。

 

よく「ご意見箱」というものを他店で見かけることがありますが、わざわざ紙に書いて意見をくださる方って、よほどご立腹なことがあったり、よほど感動されたりしない限りはそんなに書かないんじゃないかと思っていたので、これは良い取組みだと思います。

改善できること、すぐにはできないこともありますが、こうしてこちらから問いかけると普段は聞こえてこない生の声が聞こえてくるんですね。

 

今だったらインターネットでいくらでも意見があげられますが、直接向き合ってお客様の生の声を伺う方が色々なことを聞けるので、とても参考になりますね。

 

販売しているものの意見だけではなく、施設に関連したことも多くありました。

その中でも私達が気が付かなったことが、この動向調査で分かったのです。

それは。

「車椅子が通れる幅が狭い」とか「車椅子だと商品に手が届かない」とか「車椅子駐車場が一般の人の車で満車」とか「車椅子が入れるトイレがあって助かった」とか、障がい者の方々のご意見でした。

 

設備的なことであればすぐにできないこともありますが、店内の通路を広くするとか、駐車場に気を配るとか、教えていただいてとても有り難く思いました。

特に駐車場に関してはおっしゃる通り、障がい者の方ではない人の駐車が非常に多かっ

たのです。できる限り目を配り、気が付けば注意をしに行ったのですが、いやはや逆ギレされるわ、注意しようと目をあわせた途端足を引きずり始めたり、ここぞとばかり高齢者アピールをしたりと、一筋縄では行かない人たちばかりだということにも気付かされたわけです。

というわけで、色々な気付きを教えてくれる動向調査、オススメですよ!

 

続く

 

 

 

 

顔が見える=安心?

たくさんのお客様でごった返す日々。

 

開業当初、「顔が見える」。だから安心。どこの産直売場でも生産者さんの顔写真を売場に掲示していました。さらに、商品に貼付する値段ラベルには生産者さんのお名前と住所、電話番号が記載されていたので、購入する側とすればさらに安心感があったことと思います。

その当時はまだ個人情報保護法もない時代でしたので、住所や連絡先が記載されていることについて誰もそのことは気にしておりませんでしたし、通常は商品を販売する上で連絡先を記載することは当たり前だと思っていました。

 

そのやり方でしばらくたった頃、数人の生産者さんから「住所と電話番号をラベルに入れないでほしい」と訴えが出てくるようになってきました。

理由は「いたずら電話が頻繁にくる」「家を特定されて畑から花や野菜が盗まれた」「一度苦情をもらったら、お客様からしつこく何度も呼び出しがかかる」等など、生産者さんにとって深刻な問題がおきていたようです。

こうして、売れれば売れるほど、様々な問題が出てくるようになっていきます。

 

結局、ラベルでの個人情報掲載をなくし、販売店の連絡先を記載することで、店側がお客様と生産者さんの間に入ってトラブルや問い合わせの対応をすることになりました。(加工品は許可のある製造場所の住所記載が必要です)

ないよりはあった方がいいと思いますが、顔写真の掲載はそれからしばらく続くことになります。同じ顔写真で10年後も・・・。(笑)

 

お客様は手に取る野菜と生産者さんの顔写真を見ることで、「安心」?していたのでしょう。当時はそれが安心の定義のひとつとしてマスメディアでも取り上げていましたし、顔を出すことで、より責任を持って販売しているというのも事実でしたから。

 

私もまだお会いしていなかった生産者さんは、顔写真しか見たことがありませんでしたが、実際お会いしてみると、写真移りがよろしくない方(怖そうとか)でも優しかったり、写真では穏やかそうに見える方でも意地悪だったり、キツイ人だったり。

 

顔写真掲載はお客様にとって、ひとつの安心材料であったはずです。私もそう思っていました。その当時は。

当然ですが、写真だけでその人の「人となり」や性格は分かるわけもなく・・・。

この「人となり」がこの先とても大切なキーワードになっていくのでした。

 

続く

 

 

何でも売れるから何でもありに。

出すもの出すものがどんどん売れていく中、産直団体では各生産者さんの「売上目標ライン」を提示することになっていきます。

【1日1000円=1年365千円】の売上を達成しなければ団体から除名するというものでした。

1日1000円が高いか安いかという判断は、各生産者さんによって受け取り方に大きな差があったのです。出品しているモノのカテゴリや生産環境や規模によって簡単に売上達成する人と、そうではない方がいたからです。

農産物や加工品を出荷している生産者さんにとっては、軽くクリアできる売上設定でしたが、それでも一時期しか出荷できない品種のみ栽培している人や、ビニールハウスを持たず、小さな圃場で野菜を栽培している人にとっては通年出荷できずに売上達成できそうにない人もいました。

中でも、一番苦しい思いをしたのは「手工芸品」を出品している生産者さんでした。

全体の売上から見ても、毎日1000円売れる手作り雑貨だったらもはやヒット商品です。

手工芸品を出品している方は限られた棚の中であの手この手で、様々な手作り雑貨を出すように努力しているのが見受けられました。

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そんな時です。

やはり手工芸品だけでは売上が達成できそうにない生産者さんの中で、除名されないように考えた手段は加工品でした。とはいえ、農業者さんではありませんので、農産加工品としての売りや付加価値がありません。出てきた商品は「ツナの海苔巻」や「普通のサンドイッチ」でした。

産直としての「売り」は何もない、けど、売上さえ達成すれば除名は免れる。

 

「産直」って定義は何だろう?私はその時そう疑問を強く感じたのです。

 

私は施設の売場をよく見ていたので、手工芸品を見に来られるお客様が非常に多かったことを知っています。しかし、手に取ったり、じっくり見てはいるのですがすぐに購入される方は多くはありませんでした。少し金額が高い手作りバッグや装飾品なんかは、何回か来店してしばらく経ってから購入される方もいました。

このお客様達の動向を観察すると、手工芸品を見るのを楽しみにして、帰りに「野菜や加工品を買っていく」お客様だったのです。

つまり、手工芸品は集客のツールとして活躍していたカテゴリだったのです。

そのことを知らない産直団体は「売上」という指標だけでルールを作ってしまいました。もちろん、売上は大切ですし、目標も必要です。ですが、カテゴリが全然違うものを全て一律の売上目標にし、達成できなければ排除するということに私は部外者ながら産直団体から相談を受けた時に、理由を述べさせていただいて反対したのですが、受け入れられることはありませんでした。

 

そうして、手工芸品を出品する生産者さんがどんどん少なくなっていきます。

そして、手作り雑貨や時期野菜だけでは売上達成が見込めない人は慣れない加工品を作っていきます。

それが、「農」からかけ離れたものであっても「売れればよい」という風潮を作っていくことになります。

 

「産直だから安い」「農家さんが作るもの」「安心」「安全」「新鮮」などなど様々なキーワードが直売所の持つ良いイメージだと信じてやまないから、多くのお客様達が来てくれているのに・・・。売上も目標も必要だけど・・・何でもありになっていく・・・。

私は部外者ながら、どんどん複雑な気持ちになっていくのでした。

 

続く

 

 

 

天才上司が産直を救う!

直売所の欠品は段々と深刻な問題になっていきます。

お客様「午後に来ても買うのがないよね」

お客様「午前中に来るべきかしら?」

お客様「せっかく来たけど、売る気がないのか!」

そんなリアルなお客様の声がたくさん聞こえてくるようになります。

 

スタッフ達もあの手この手で生産者さんに連絡をしていました。

「売場の棚がガラガラです。商品の補充をお願いします!」

商品が売場にないことを「電話」や「FAX」で連絡するのですが、なにせ農業者さんですから、皆さん天気がよければほとんどの方は自宅におりません。

そうなんです、大抵皆さん畑か田んぼか小屋にいるのです。

これでは連絡がつきません。

当時はまだガラケーの時代。若い生産者さん達は携帯電話を持っていましたがご年配の生産者さんであれば持っている方がほとんどいなかったと思います。

商品のないガラガラの売場を写真に撮り、掲示板に貼って生産者さん達に見てもらうようにしたりと、様々な工夫をしていたのですがなかなか改善されずにいました。

 

私は産直とは違う他のテナントとして小売に携わっていたので、この欠品問題は本当に深刻で、私達のテナントにも関わってくる大きな課題となっていました。

そんな時でした。

私の直属の上司があるとんでもないシステムを発表したのです。

彼はいつもパソコンに向き合って何やらやっていました。当時EXCELもWORDもできなかった(自力で今は少しはやれるようになりました)体育会系の私には、彼が何をやっているのかさっぱり分からなかったのですが、ここにきてその答えが分かることになるのです。

な、なんとっ!彼は「欠品防止システム」を開発していたのです!

毎日コツコツとパソコンに向かっていた理由は、そのプログラミングをしていたからなのです。

 

それは、POSレジでカウントされた各生産者の個人売上が、自動的にその生産者の携帯にメールで配信されるというものでした。配信時間を設定し、1日数回に分けて自動送信する仕組みです。

これにより、生産者はメールの配信時間に売上をチェックすれば、リアルタイムに近い状態で在庫数量を把握でき、補充する野菜の準備をいち早く行うことができるというものでした。しかも、畑にいようが小屋にいようが、どこにいても在庫が確認できるのです。

こんな凄いことってありますか!!!

当時、どの直売所でもそんなシステムはない時代です。ましてやIT企業ですら未開発のシステムでした。

このシステムは欠品防止対策のために作られましたが、結果的に数千万円という(当時の報道では7千万円)莫大な経済効果をもたらすことになるのです。

私ごときが言うのも厚かましいですが、本当にとてもとても優秀な上司でした。

私は体育会系、感情的に物事を捉えるタイプ(でしょうね。という声が聞こえます。)で、彼は理論的で知的、穏やかで紳士的といったタイプで、私とは真逆の方でした。タイプ的には相容れない感じですが、産直とは別の会社でテナント運営にあたっていた私達は、今思えば直売所にかける想いは形が違えど似ていたように思います。

 

そして、そのシステムを産直の生産者に使っていただくために、上司は開発費無視の無料提供を始めたのです。

 

すぐにそのシステムにのった若い生産者達は、その恩恵を受けていくことになります。そしていつしかそのシステムの評判は一気に広がり、ご年配の生産者さん達でさえ携帯電話を購入してそのシステムを活用することになっていきます。

「欠品防止」という目的のシステムでしたが、生産者さん達はリアルタイムで「売上」がメールで閲覧できるため、結果「やる気」に繋がっていったのです。

 

今では産直のPOSレジを提供する企業さんでは標準装備になったこのシステムですが、当時は本当に凄い発明で、彼は某PC会社のビジネス賞で優勝し、アメリカに招待されました。

 

こんな凄い上司と一緒に働くことができて本当に私はラッキーでした。物事を論理的に考えること、仕組み作りの大切さ、言葉遣いに至るまで色々学ばさせていただいたことに心から感謝しています。

 

私だったら生産者さんに電話が繋がらなかったら、畑に行ってくるっ!と鉄砲玉のように飛んでいくでしょうね。いつまでもアナログで効率の悪いやり方しかできなかったんだろうなぁ・・・。私の頭では。

 

この天才上司のお陰で、私達と一緒に同居しているテナントの産直は向かうところ敵なし状態だったような気がします。当時はね・・・。

 

続く

 

 

課題が見えてきた

直売所は大盛況の毎日。予想以上の売上となっていきます。

そうなれば当然ですが、様々な課題が出てくるようになります。

この時、一番の大きな課題は「欠品」でした。

モノを出せばすぐ売れるのはいいのですが、午後になると売場がスッカラカンな状態が多く、その時間に来られるお客様にしてみたら「何もない」店なわけですから、とてもがっかりさせてしまいますし、悪い評判としてすぐ広がってしまいます。

 

そこで、産直団体がとった行動は「売上げランキング」の掲示でした。

各生産者さんの売上を日々公表(生産者さんだけが見れるところに貼っていました)し、競争意欲を掻き立て、午後も出荷することで売上を上げよう!みたいな雰囲気を狙ってのことだったように思います。

一般の会社では普通というか、成績を上げるためには必要なことじゃないかな?と部外者の私は思っていました。課題解決に向けて一歩前進したわけだし、それで皆頑張ろうと思ってもらえるなら良い取り組みなわけで。

 

しか~しっ!

その取り組みは長続きせず、全く想像していなかったことで止めざるを得なくなったのです。

何が起きたのでしょう・・・。

売上げランキングは生産者さんの不平不満が続出したとのことでした。

私は『あ~、下位のランクの方々が恥ずかしいから出さないでってことになったんだろうなぁ』と思っていました。

が!

そうではありませんでした。

上位ランクの方々からの申し出が多かったそうです。

理由はこうでした。

「あんたんどご(あなたのところ)、やだらと儲がってらずな(とても儲けているみたいね)」と、自分の住んでいる地域の方々から言われるようになり、家族であるお姑さんまで肩身が狭い思いをしているとのこと。売上額を隣近所に言いふらしている産直の生産者がいるから、とても迷惑しているとのことでした。

その頃、ローカル新聞でも、○○の産直売上○○円突破!みたいな記事も出ていたくらい、産直バブルが起きていたのです。

生産者同士しか見ることのない個人売上の公表は、結果住んでいる地域にまで知られることになっていったのです。真面目にコツコツ農産物を育てて出荷しているだけなのですが、妬みの対象となり、集落の人付き合いに影を落とすことになったのです。

隣近所と希薄な付き合いしかしていない私らから見ると、そんなこと気にしないで今まで以上に頑張ればいいじゃん!なんて簡単に思っていましたが、生産者さん達にとっては先祖代々から暮らしている集落で、妬み僻みを受けると家族にも様々な迷惑がかかる程重大なことのようでした。そんなこともあるのかと、私はまたひとつ農家さんに関わることを勉強するのでした。

というわけで、これでは今まで頑張ってきた生産者さんのやる気を削ぐことになりかねません。売上下位の人にやる気を起こさせるどころか、上位者の売上がダウンしてしまうのは大変だ!

というわけで、まさかの売上上位者からの申し出で「売上げランキング」の公表はすぐになくなりました。

 

となると、重大な課題である「欠品」対策をどうするべきか・・・。

 

そんな中、毎日パソコンに向かって何やらやっていた私の上司が驚くべき欠品対策を示してきたのです!(注:私も上司も産直とは別な会社の人間です)

 

次回、天才上司産直を救う!の巻

 

続く

 

 

直売所が大盛況!

今から数十年前、農産物を生産者が直売する産直スタイルが始まり、それはそれは大盛況となっていきます。

新鮮で尚且価格が安いということもあって、毎日多くのお客様で賑わいました。

生産者さん達にとって、自分で出荷したものが毎日売れていくのが楽しい日々。楽しくてしょうがないという思いが全身に溢れ出ていました。

そんな農家さんたちを私は微笑ましく見ておりました。(過去形です)

 

産直が始まる前の農業者さんたちは、収穫した野菜を市場や農協さんに出荷していたわけです。当然、売上の入金先は旦那様の通帳に入っていたわけです。作業の対価として奥様個人に直接的に入る収入はなかったわけです。ずっ~と影の存在だったんですね。家業のお手伝いさんみたいな感じで。

それが産直活動に携わってからは、奥様個人の通帳に「頑張りが目に見える」形で入金されるわけですから、そりゃぁもう頑張るわけですよ!

しかも、市場や農協さんで引き取ってもらえない「規格外」の野菜もお金になるわけですから、農家さんも嬉しい!お客様も安く買える!小売側も商売ができる!三方良しの画期的な産業に成長していくわけです。

さらに、今まで農家家業の中でも表に出てこなかったおばあちゃんでさえ、自分の名前でモノが売れてお金になる。年金にプラス収入が生まれるわけですから「生きがい」にも繋がるわけですし、その上地域の特産品もアピールできて、観光客の誘客にも繋がるし、地域の雇用も増えるし、本当に何もかもいい事づくしの事業だとその当時は思っていました。

 

開業当初はイケイケドンドンで、生産者さんも施設のスタッフ達も皆明るくて、やる気があって、産直の若いスタッフも「日本一の直売所にするぞ~!」みたいなことを言っていましたしね。全国でまだまだ直売所の事例があまり多くない中、毎日大盛況の日々に皆活気づいていました。

商品を出せばぜ~んぶすぐ売れる!そんな毎日が続くのですから。

 

農業のことも、農産物のことも知らない私はそんなテナントの大盛況事業を別会社の人間として羨ましく思っていたのでした。

 

その当時は・・・。

 

続く